いつからか幕があいて 僕が生きはじめてゐた。 僕の頭上には空があり 青瓜よりも青かった。
人間よ。 ああ、人間をうんだ無慈悲な母よ ! あなたの子供たちが、追いつめられ苦しんでいることを 御存じですか。 あなたがどうすることも出来ない遠いところで、 一万里もはなれた荒野のまんなかで、 子供たちは、あなたよりほかに呼ぶものがないのですよ。
(金子光晴・人間の悲劇より)